プールサイド
プールサイド
「何してるの?」
「別に何も」
「ここは、こんな季節に
来る場所じゃないよ」
「じゃ、なんでアンタは
ココに居るわけ?」
「君が居ると思ったから」
私はこの人が苦手だ。
何を考えているのか
解らないだけじゃない。
会話をしていて
主導権がつかめない。
「意味わかんない
あんたなんなの?」
「何が?」
「何がしたいの?」
「うーん、愛したいのかな?」
やっぱり解らない。
何考えてるのか解らない。
「君さ、愛され方
わかんない感じだよね?」
「なにそれ」
「甘えればいいんだよ」
私が動けなくなったのは
抱きしめられたからじゃない。
この世界に
こんな甘い台詞を
さらりと言ってのける人間がいることに
驚いたからだ。
ふと顔が近づいた。
ちゅ
オデコに何か
接触した。
「…ねぇ、今の…」
「ん?」
「今の何?」
「口にして欲しいの?」
「何言って…」
「キスもね、いろいろあるんだよ」
そういったこの笑顔の人間は
私とどうなりたいのか。
「こんなコトされたって
あんたのコトなんて好きになんないよ」
「いいよそれで」
「なにそれ」
「俺は君を甘やかしたいんだよ」
そういったこの人間の笑顔を
なんとか崩してやりたくて
でもそんなコトできないと
頭のどこかで感じていた。
だから今は疲れたから
もうどうでもいい。
この甘ったるい関係に戸惑いながら
反面受け入れてしまう予感がしていた。
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