ヒトリノ夜
ヒトリの夜
この場所は
澄んでいる様で淀んでいる
「”痛みの無い洒落たストーリー”」
「なに?突然」
「なんかこんな感じの歌詞なかったっけ」
「さぁ?わかんない」
「わかんない?」
「うん」
「そっか」
「うん」
冷えた空気は
澄んでいるように感じさせるが
実際この場所は
換気しきれていない空気と
何十人とすっている
タバコの煙が
充満して淀んでいる
「おい」
「何?」
「あの女、お前のコトつまんないっつってた」
「今隣にいた子?」
「そうそう」
「俺のほうこそつまんなかったよ」
「はは、お前なぁ」
いつからだっけ
この空気に息苦しさを
感じなくなったのは
「なんだっけ」
「何が?」
「ソコしか思い出せない」
「何が?」
「”痛みの無い洒落たストーリー”」
「??」
「なんて曲だっけ」
この場所で聞こえる音といえば
マジを連呼する女の声や
ウゼーを連呼する男の声や
ノリがいいのかうるさいのか分からない曲と
心臓に重く響くベース音
「さぁ?そんだけじゃわかんねーよ」
「そっか」
いつからだっけ
この騒音に
何も感じなくなったのは
「お前ってまだアイツのコト好きなの?」
「わかんね」
「だったらすげーな」
「わかんねーってば」
「おい、大丈夫か?」
「何が?」
「お前顔色悪いけど」
「あぁ、この曲に酔ってるだけ」
「たしかにうるさいな」
「歌詞が甘すぎる」
「あぁ、そっち」
「現実なんてこんな甘くないだろ」
「たしかに」
「あ」
「どうした?」
「”甘いメロディーに酔わされて”」
「何がだ?」
「”口ずさむ洒落た痛みの無いストーリー”」
「マジでお前どうした?」
「ポルノグラフィティー」
「あぁ、歌手の?」
「あの人たちが歌ってたヤツだ」
「わりー、俺ポルノあんま知らない」
「俺ちょっとTSUTAYAいってくる」
「お、おい」
TSUTAYAで手にした歌詞カード
そこに在る歌詞に胸が痛くなって
泣けてきた
「俺マジでまだ好きなんだなぁ」
”onlylonly会いたくて”
”凍えそうな毎日に”
”言葉にできないことは”
”無理にしないことにした”
「俺ヘタなんだよ…」
俺を伝えることとか
気持ちを表現するとか
”あの人だけ心の性感帯”
”忘レタイネ強ク弱イ心”
「弱い俺でごめんね…」
俺にはもう気持ちを伝える術も
そんな強さも無いから
”君だけはオリジナルラブを貫いて”
君との繋がりがなくなった俺の世界は
あまりにも変わってしまったよ
そんな世界で
俺は今日もヒトリ
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久しぶりにポルノの歌を聞きました!
俺昔すっごくポルノが好きで
この歌もはじめて聴いたとき『かっけーこの歌詞!』
と思った記憶があります。
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