サヨナラ
ねぇ、俺が死んだら悲しい?
なんだか怖くて聞けないや
お前ならきっと
せいせいするって
言いそうだから
サヨナラ
この場所は
いつ来ても殺風景で
見えるものといえば
高さの揃わない雑草が
なんの手入れもされず
伸びている様子だけ
こんな場所にある思い出なんて
たいしたものなんて無いのに
なんでお前は
こんな所まで来たんだ
「アンタはバカですよね」
「なんだよそれ、失礼なヤツだな」
「自分がどんな風に他人に思われてるか
ホント分かってない」
「どういう意味だ」
「みんなアンタのコト好きなんですよ」
「おいおい、どうしたんだ急に」
「アンタはホント自分勝手で」
「そうだなぁ…」
「てか人を振り回して楽しんでるでしょ」
「うん」
「でも振り回されてもね、皆楽しかったんですよ」
「そうなの?」
「あんたが居るだけで、楽しかったんですよ」
ホントどうしちゃったんだか
今日のこいつは少し変だ
どこが変なのかを言葉にするのは難しいが
俺が普段受けている
こいつからの罵倒を思い出せば
あきらかにこの会話が変だと分かる
いや、会話は
して…ないか
「いつも迷惑かけてごめんね…」
「ホント、言ってやりたいことは
山ほどあるんですよ…」
「うん…」
「だけど…あんたが居ないと
意味がないじゃんか」
「そうだね」
「今…どこに居るんですか…っ」
「…」
―お前の隣に居るよ
そう答えても返事は無い
もうお前にこの声は
聞こえないんだな
姿も…見えていないみたいだな
「ホント、俺なんでこんなに泣いてんだか」
ホントだよまったく
なんで泣いてるんだよ
泣いてる顔なんて
見せたくなかったんだろ?
俺が居なくて悲しいんじゃないかって
思われるのムカツクもんな
なのになんで
俺が隣にいるのに
俺が見てるのに
泣いてるんだよ
「よしよし、ホントはお前も
俺のコト大好きだったんだなぁ」
頭に触れた手には
なんの感触もなかった
それでも
何かが届くような気がして
ごめんな
皆を置いてくつもりじゃ
なかった
だけどさ
定められた時間が
来ちゃったんだよ
「俺はもう行くけど、寂しがるなよ」
「寂しくなんかないです」
「そうか?俺は寂しいのに」
「ただ少し、物足りなくなるだけです」
「なんだよそれー」
「そんなもんです、アンタなんて…」
「そうだね」
お前らしいな
こんな最後なら
別れって感じがしないな
サヨナラって感じだ
お前らならきっと
ずっと笑ってられる
俺のコトなんて忘れて
笑ってられる
俺はそう信じてるから
もう逝くよ
「さよなら…」
「うん、さよなら」
「え?」
風が俺を
連れて行こうとした
だからお願いした
今アイツの涙を
乾かししちゃうくらい強い風で
俺を連れてってって
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