Novel

プールサイド

 


プールサイド

 
 
 
 
「何してるの?」

「別に何も」

「ここは、こんな季節に
 来る場所じゃないよ」

「じゃ、なんでアンタは
 ココに居るわけ?」

「君が居ると思ったから」
 
 
私はこの人が苦手だ。
何を考えているのか
解らないだけじゃない。
会話をしていて
主導権がつかめない。
 
 
「意味わかんない
 あんたなんなの?」

「何が?」

「何がしたいの?」 

「うーん、愛したいのかな?」 

 
やっぱり解らない。
何考えてるのか解らない。


「君さ、愛され方
 わかんない感じだよね?」

「なにそれ」

「甘えればいいんだよ」


私が動けなくなったのは
抱きしめられたからじゃない。

この世界に
こんな甘い台詞を
さらりと言ってのける人間がいることに
驚いたからだ。

ふと顔が近づいた。


ちゅ


オデコに何か
接触した。 


「…ねぇ、今の…」

「ん?」

「今の何?」

「口にして欲しいの?」

「何言って…」

「キスもね、いろいろあるんだよ」


そういったこの笑顔の人間は
私とどうなりたいのか。


「こんなコトされたって
 あんたのコトなんて好きになんないよ」

「いいよそれで」

「なにそれ」

「俺は君を甘やかしたいんだよ」


そういったこの人間の笑顔を
なんとか崩してやりたくて
でもそんなコトできないと
頭のどこかで感じていた。

だから今は疲れたから
もうどうでもいい。

この甘ったるい関係に戸惑いながら
反面受け入れてしまう予感がしていた。

 
 

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サヨナラ

ねぇ、俺が死んだら悲しい?

なんだか怖くて聞けないや
お前ならきっと
せいせいするって
言いそうだから




サヨナラ 
 
 
 


この場所は
いつ来ても殺風景で
見えるものといえば
高さの揃わない雑草が
なんの手入れもされず
伸びている様子だけ

こんな場所にある思い出なんて
たいしたものなんて無いのに
なんでお前は
こんな所まで来たんだ


「アンタはバカですよね」

「なんだよそれ、失礼なヤツだな」

「自分がどんな風に他人に思われてるか
 ホント分かってない」

「どういう意味だ」

「みんなアンタのコト好きなんですよ」

「おいおい、どうしたんだ急に」

「アンタはホント自分勝手で」

「そうだなぁ…」

「てか人を振り回して楽しんでるでしょ」

「うん」

「でも振り回されてもね、皆楽しかったんですよ」

「そうなの?」

「あんたが居るだけで、楽しかったんですよ」


ホントどうしちゃったんだか
今日のこいつは少し変だ
どこが変なのかを言葉にするのは難しいが
俺が普段受けている
こいつからの罵倒を思い出せば
あきらかにこの会話が変だと分かる 

いや、会話は
して…ないか


「いつも迷惑かけてごめんね…」

「ホント、言ってやりたいことは
 山ほどあるんですよ…」

「うん…」

「だけど…あんたが居ないと
 意味がないじゃんか」

「そうだね」

「今…どこに居るんですか…っ」

「…」


―お前の隣に居るよ

そう答えても返事は無い
もうお前にこの声は
聞こえないんだな
姿も…見えていないみたいだな


「ホント、俺なんでこんなに泣いてんだか」


ホントだよまったく

なんで泣いてるんだよ
泣いてる顔なんて
見せたくなかったんだろ?
俺が居なくて悲しいんじゃないかって
思われるのムカツクもんな

なのになんで

俺が隣にいるのに
俺が見てるのに

泣いてるんだよ


「よしよし、ホントはお前も
 俺のコト大好きだったんだなぁ」


頭に触れた手には
なんの感触もなかった
それでも
何かが届くような気がして

ごめんな

皆を置いてくつもりじゃ
なかった
だけどさ
定められた時間が
来ちゃったんだよ


「俺はもう行くけど、寂しがるなよ」

「寂しくなんかないです」

「そうか?俺は寂しいのに」

「ただ少し、物足りなくなるだけです」

「なんだよそれー」

「そんなもんです、アンタなんて…」

「そうだね」


お前らしいな
こんな最後なら
別れって感じがしないな
サヨナラって感じだ

お前らならきっと
ずっと笑ってられる
俺のコトなんて忘れて
笑ってられる
俺はそう信じてるから
もう逝くよ


「さよなら…」

「うん、さよなら」

「え?」


風が俺を
連れて行こうとした
だからお願いした
今アイツの涙を
乾かししちゃうくらい強い風で
俺を連れてってって

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ヒトリノ夜

 


ヒトリの夜
 
  

 
 

この場所は
澄んでいる様で淀んでいる


「”痛みの無い洒落たストーリー”」

「なに?突然」

「なんかこんな感じの歌詞なかったっけ」

「さぁ?わかんない」

「わかんない?」

「うん」

「そっか」

「うん」


冷えた空気は
澄んでいるように感じさせるが
実際この場所は
換気しきれていない空気と
何十人とすっている
タバコの煙が
充満して淀んでいる


「おい」

「何?」

「あの女、お前のコトつまんないっつってた」

「今隣にいた子?」

「そうそう」

「俺のほうこそつまんなかったよ」

「はは、お前なぁ」


いつからだっけ
この空気に息苦しさを
感じなくなったのは


「なんだっけ」

「何が?」

「ソコしか思い出せない」

「何が?」

「”痛みの無い洒落たストーリー”」

「??」

「なんて曲だっけ」


この場所で聞こえる音といえば
マジを連呼する女の声や
ウゼーを連呼する男の声や
ノリがいいのかうるさいのか分からない曲と
心臓に重く響くベース音


「さぁ?そんだけじゃわかんねーよ」

「そっか」


いつからだっけ
この騒音に
何も感じなくなったのは


「お前ってまだアイツのコト好きなの?」

「わかんね」

「だったらすげーな」

「わかんねーってば」

「おい、大丈夫か?」

「何が?」

「お前顔色悪いけど」

「あぁ、この曲に酔ってるだけ」

「たしかにうるさいな」

「歌詞が甘すぎる」

「あぁ、そっち」

「現実なんてこんな甘くないだろ」

「たしかに」

「あ」

「どうした?」

「”甘いメロディーに酔わされて”」

「何がだ?」

「”口ずさむ洒落た痛みの無いストーリー”」

「マジでお前どうした?」

「ポルノグラフィティー」

「あぁ、歌手の?」

「あの人たちが歌ってたヤツだ」

「わりー、俺ポルノあんま知らない」

「俺ちょっとTSUTAYAいってくる」

「お、おい」 
 
 

TSUTAYAで手にした歌詞カード
 

そこに在る歌詞に胸が痛くなって
泣けてきた  
 
 
「俺マジでまだ好きなんだなぁ」 





”onlylonly会いたくて”

”凍えそうな毎日に”


”言葉にできないことは”

”無理にしないことにした” 
 


「俺ヘタなんだよ…」


俺を伝えることとか
気持ちを表現するとか


”あの人だけ心の性感帯”

”忘レタイネ強ク弱イ心” 
 


「弱い俺でごめんね…」


俺にはもう気持ちを伝える術も
そんな強さも無いから
 


”君だけはオリジナルラブを貫いて”
 


君との繋がりがなくなった俺の世界は
あまりにも変わってしまったよ

そんな世界で
俺は今日もヒトリ  
  
 
 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

久しぶりにポルノの歌を聞きました!
俺昔すっごくポルノが好きで
この歌もはじめて聴いたとき『かっけーこの歌詞!』
と思った記憶があります。

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ねぇ知ってましたか?
俺はあなたが好きなんです。
 
 
 
 
 
痕 
 
 

「大丈夫ですか?」


彼女の顔をのぞきながら、
そう聞いてみたけれど…。


「ぜーんぜんだいじょ~ぶ~」


どうぜこの酔っ払いが、
正しい答えを答えるはずは無い。


「大丈夫じゃないじゃないですか」

「ぜんぜん酔ってないよぉ~」


そういって笑ってはいるが、
この状況を理解していない時点で、
かなり酔っていることは確かだ。


「お酒ってのはほんと…」


そう思いながら、彼女の頭を抱え上げる。


「あなたは人妻になったのに
 別の男の膝の上で寝てるんですよ?」


そういっても、
ただ笑って俺を見上げるだけで。


「しかも…良い人間じゃない俺の膝で」


状況は最悪だ。
こんな状況を、
望んだんわけじゃない。

ただでさえ限界を感じてきたのに、
スットッパーを外そうとするように、
状況は俺を追い込む。

なのにこの酔っ払いは、
俺の気持ちも湧く感情にもおかまいなしで、
しかも緊張感なく笑って、
俺にしがみ付いてくるあたりが、
恐ろしい。


「襲っちゃいますよ…」


そういって笑ってみたのに、
顔がひきつって笑えない。

心と顔は繋がっているようだ。

苦しいだけのこの状況に、
俺の心は軋むだけだった。


「どうしてそんな顔してるの?」

「え?」


そういって見上げてきた顔に、
緊張する。


「どうしていつもそんな顔するの?」


そういって触れてきた手の温度に、
鳥肌が立った。


「辛いことがあったら言いな?聞かれたくないことでも、
 きっと明日にはあたし忘れてるからさ」


そういって微笑むあなたは、
酷い人です。


「ねぇ、知ってましたか…」


顔を見られたくなくて、
抱きしめた。


「俺はあなたが好きなんです」


胸が張り裂けそうだった。

言葉にすることで、
その事実がよりいっそう重く、
俺の心の中に落ちる。
腕の中で彼女は、
静かに夢を見ていた。

体から沸く熱に押され、
腕の中に顔をおとす。
触れた唇に残る熱に惹かれながら、
その寝顔に思いは募って。

流されそうになる熱い激情の波に 


「どうか今日の事は・・・」
 

俺の精一杯の理性で耐えながら 


「どうか・・・忘れてくださいね」


もう一度触れた口元に、
俺は俺の思いを残した。
 
 
 
 
 
※※※※※※※※※※※※※※※

リハビリだと思ってくださいね!(笑
俺もそう思わないと書けなくて。

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コタツ主義2

「おい、ふざけんなよ」


こいつが変な奴なんて事実は
百も承知


「何が?」


そう言って振り向くこいつは
フザケたりイタズラをしたり
なんていうことをする
おちゃめなタイプじゃなことも
俺はこの何年かでちゃんと学習した


「いや、お前が描いてるその絵」

「あぁ、これが何?」


それでも
問いかけずにはいられない


「まさかこれが俺なんて言わないよな?」


否定を期待して呟いた言葉は


「何で?これお前だよ?」


肯定として帰ってきた


目の前に広がる絵
キャンパスに描かれているのは
とてもじゃないが人間じゃない
ましてや、俺なんかであるはずがない


「いやいや、これ人間ですらないだろ」

「たしかに人間じゃないけど」

「なんだ、そいう事実は認識してるのかよ」

「だけど、俺にとってはお前だよ」


あぁ神様、俺に芸術を
理解する能力をください

それともあれか
もしかしたらこいつに
「俺の絵を描いて欲しい」
なんて頼んだ俺のほうが
フザケてるのか


「一応聞くけど」

「何?」

「これコタツだよな?」

「うん、コタツだよ」

「これが俺?」

「うん。なんで?」


なんでって…
察しろよ!


「いや…」

「…?」

「…」

「…?」

「…ありがとう」

「うん。どういたしまして」


そうか俺が間違ってるのか
変なことを言ったのは俺だ
何もかも全部変なのは俺だ
俺なんだ

そんな気がしてきた


「あのさ、聞いてもいい?」

「何?」

「なんでコタツが俺なの?」

「なんでって」


そういって俺を見たその顔は
『なんでそんな当たり前なこと聞くの?』
と語っていて


「温かいから」


そう答えたこの芸術家は
さもソレが世界の常識かのような
言い方をした


「は?」

「お前と居ると温かいから」


明らかに説明不足な状況なのに
あっけにとられている俺を残して
またキャンパスに向かうこいつが
俺は本当に理解できなかった

こいつはまさか
自分の考えていることが
世界共通の認識だとでも思っているんだろうか

こいつの言った言葉にあっけに取られて
俺はこいつがその絵を描き終わるまで
側にずっと突っ立ていた

そして
突っ立ちながら思った

このコタツは暖かそうだなと
ミカンが食べたくなるなと
なんだか家のコタツが懐かしくなるなと
こいつはそんな風に俺を思ってるのかと

そして
やっぱり芸術を理解するセンスは
俺には1ミリもないなと
心底思った
 
  

※※※※※※※※※※※※※

ひさしぶりのNovelは
難しいです(悩

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コタツ主義1

「あぁーなんか映画みたい」

「青春映画?」

「そんな感じっす」

「はは、そうか?」


そう言ってあなたは笑うけど
俺にとってこの場所は異世界だ
というか次元時代の違う別世界
普段の俺にはありえない
テレビ画面の向こう側の世界なんだ


「逃げたくなったら
 逃げた方がいいこともある」

「俺は割りと普段から逃げてるんですけどね」

「いやっ、おっきく逃げるんだよ」

「おっきく?」

「そ」

「今みたいに?」

「そ」


そう言ってあなたは笑う
たしかに”おっきく”逃げたら
気持ちの持ちようが
大きく変わった気がする


「凄いですね」

「何が?」

「先輩がです」

「あはは、俺はなにも凄くないよ」


そう言った声は静かだった
顔は上を見上げていて
俺からはどんな表情なのか見えないから
少し不安になった

けど


「でも俺後半追い上げるタイプだからさ」


そういって俺を見たあなたは
笑っていた


「そしてお前もそうなんだよ」

「え?」

「足並みそろえるのは遅くても
 後半は追いついて追い越すんだろ」


その言葉に世界の空気が
変わった

ここはなんて温かい場所なんだろう
励まされているのに
全然苦しくない


「先輩ってコタツみたいです」

「は?なんだ急に」

「温かくて眠くなる」

「はは、そうか」

「ヒトが集まるし」

「お前みたいなのがね」


そういってまた笑った

この人はいつも笑ってる
だから俺は
この人の側にいることが温かい


 
 
 
※※※※※※※※※※※※※※※

この時期に!なんですが
Novelがたまっちゃって(笑

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